岩壁に刻む カノンの日記
〜スニオン岬に閉じ込められてからの10日間〜
1日目くそっ!サガめ!こんなところに閉じ込めやがって!!食料もないぞ!!
本当に殺すつもりか、あいつ…どうかしてるぞ!!
水があれば、すぐには死なないって事か?
でも、海水なんて、塩っ辛くて飲めたもんじゃねーぞ!
つーか、クラゲだらけだ。
オレ…、どうしよう……。
2日目蝶が飛んできた。こんなところに珍しい、と思っていたら、波にさらわれて一瞬で砕けた。
「超かわいそう」 …そうつぶやいてからオレは思った。
なんと高尚なシャレだろう。「超」と「蝶」が掛詞になっている。
これから毎日作ろうかな…と思ってたら、おぼれてオレの思考は停止した。
満潮時刻の出来事だった。
オレも…超かわいそう…。
3日目ああ…もう、3日目か……。
今日まで、なにも食べてない……。…本当に…死にそうだ…
海水…飲んでみようかな…。
4日目昨日、海水を飲んだ。…あれはダメだ!失敗だった!
よけい喉が渇いて渇いて、あ〜〜〜普通の水がほしいっ!!!
はっっ!!! こ、苔が生えている!!
これ…食べれるかな…
5日目これで5日目…。
オレを閉じ込めてから、たったの1度もサガは来ない。
あいつ!本当にオレを殺す気なのか?!
つーか、オレ、こんな所に閉じ込められんきゃならんような悪いこと、やった覚えはないぞ!!
……オレ、なんでここにいるんだろ…
6日目最近、意識がよく飛ぶようになった……
今日はもう、日記を刻む気力もない…
そういえば、日記代わりに使ってる壁、ずいぶんぼろぼろになったな…
7日目もう、ダメだ…
いっそ楽にしてくれ…、と思うこともあるのだが、なんかそう思うたびに暖かい小宇宙を感じる。
それでオレは救われてるんだが…、たまに思う、蛇の生殺しみたいだ!
小宇宙よりも食料が欲しい!
中途半端な手助けは、かえって迷惑だ!!
…って言えたらなぁ…。どこの誰だよ、あの小宇宙……
8日目今日も、あの暖かい小宇宙を感じた…
が、なんか変だ!
小宇宙とともに、赤ん坊の泣き声と変なオヤジの歌声が聞こえてきた。
しかも、歌は子守唄…気味悪いことこの上ない…
オレ、大丈夫かな…?
9日目また、聞こえてきた−−−!!!
やめてくれーーー!あの子守唄!!
永遠に寝てしまいそうだ!!
ここから出してくれ!
サガめ、これがねらいだったのか−−!
なんて、恐ろしい奴だ。我が兄ながら、つくづく思う。奴は、敵に回すべきじゃない!!
…後悔、先にただず…
10日目祝☆10日目!!
……オレ、本当に大丈夫か?ちっともめでたくないぞ!
しかし、もう10日目か…。月日がたつのは本当に早いな。
壁ももう、ぼろぼろだ。これならオレでも砕けそうだぞ。
おお、これは!!もしかしたら、ここから出られるかもしれんぞ!
…でも、思いで深い日記を刻んだこの壁を壊すのも………って、オレはバカか?!日記つき壁と自分の命を天秤にかけるなんて…
よし!決めた!壁を砕くぞ!!
日記よさらば!!
岩牢よ、さらば!
そして、不気味な子守唄つき小宇宙ともさらばだ!!
その後、カノンは三叉の鉾を見つけ、海底に引きずり込まれることになる…
END