まやかしの水
古い話ですが、2014年6月13日に職場でイカサマな商品の販売会に参加しました。その顛末を書きます。商品のメーカーはT社。当方からの複数回の質問に全く回答はなく、取り扱っていた職場の生活協同組合が取引停止になっただけで時効を迎えるつもりのようです。
職場の生活協同組合を通じて、活性水素水製造装置で作った水素水で作った昼食を食べながら装置の販売説明会を行うという話がありました。約15年前にも同じような話が持ち込まれたことがあり、職場の総務課に抗議をしたことがありましたが、総務課の対応は「生協が認定しているのだから」の一点張りでした。「まだこんなことをやっているのか!」という訳で、職場の何人かで販売説明会の内容チェックを行うことにしたのでした。
話の冒頭で「Jリーグのチームに使ってもらっています」という説明がありました。そして活性水素水の素晴らしさについての説明があり、後半に4つの実験がありました。問題なのは4つの実験の内容です。
実験@ ヨウ素でんぷん反応による青色が、当該水で「還元されて」無色になる。
実験A ヨウ素消毒液の褐色が、当該水で「還元されて」無色になる。
実験B 米をメスシリンダーにいれて、比較水と当該水を加えると、当該水を加えたものが、明らかに濃い黄色になる。
実験C 茶葉をメスシリンダーにいれて、比較水と当該水を加えると、当該水を加えたものが、明らかに濃い黄色になる。
これらは、いずれも、当該水が水道水水質基準を超えたアルカリ性であることによるもので、水素による還元とは関係ありません。
特に、実験@、Aでは、ヨウ素分子が因子となっています。ヨウ素は塩素などと同じハロゲン族の原子です。水にはわずかに溶解します。溶解したものは、弱酸性を示します。ここで、水の液性をアルカリにしますと、弱酸性の物質ですから、より多く溶解することになります。ヨウ素は、分子状態では、褐色に見え、デンプン液に加えると、青っぽい色(デンプンの構造により、赤っぽくなることもある)に見えます。これは、分子状態だからです。 一方、ヨウ素イオン状態には色がありません。このことは、塩素と似ており、塩素分子(ガス)は、薄緑色ですが、塩素イオンは無色透明です。実験B、Cについては、アルカリ水添加による実験を行い、同じ現象を確認しました。
T社の装置では、実際には水中の水素濃度を計測してはいません。この数字は、カタログにもあるとおり、計算値に基づいた推測値とのことです。
結局、この改質装置の正体は「アルカリイオン製造装置」でした。昔のアルカリイオン水ブームの時と異なるのは、よりアルカリ性の処理水を得られるようにしたことと、名前を「活性水素水」としたことでしょう。