2A3真空管アンプ

もう30年も前になりますが、名古屋の大須に「オーディオ専科」と言う店がありました。真空管アンプや、それに使用するパーツ類の店で、店内では常に音楽がかかっていました。アルテックの同軸型スピーカーから聴こえる弾むようなその音は、まだ20代前半だった青年の心をつかむのに十分なものでした。オーディオ店でふと聴こえてくる音楽は何で良い音なんでしょう。不思議です。それから店主は私の師匠となり色々なことを教わりました。

なんか爺さんの回想録みたいな話ですが、これは1980年代のことで、時代は既に半導体全盛期で、真空管は現在(2020年)よりも古めかしいものでした。(現在は真空管も復権してますもんね。)
その後、店主は不祥事で首になり、名古屋のオーディオ専科は店を畳んでしまいました。元々は東京神田に本社がある店で、名古屋は赤字だったのでしょう。文化不毛の地、名古屋ですからそういう商売は、かなり難しかったと思います。師匠は森川忠勇先生(オーディオ専科の社長でオーディオ界では有名な設計者、ライターです。)にも会わせてやると言ってましたが叶わぬ夢でした。何年か後、東京のオーディオ専科に行った時にお会いしましたが、師匠の不祥事のこともあり、まさか「あなたが首にした師匠の弟子です。その節はえらい目に遭いましたね。お会いできて光栄です。」とも言う訳にもいかず、少しの部品だけ買って帰りました。

そのような時代に師匠から購入したのがトップページに記載した真空管アンプです。2A3を出力管に使用したシンプルな真空管パワーアンプです。

これは最近撮影した写真ですが、銘板なんか昨日買ってきた機器みたいに輝いてます。(実は保護ビニールを最近剥がしました。)真空管アンプの良いところは、能動部品である真空管がソケット式のため不良になったら取り換えられることです。したがって寿命が滅茶々々長いです。インバータ式の照明は必ず壊れ廃棄されますが、白熱電球は死ぬまで使えるのと同様です。

それでも、30年間使用するためにはメンテナンスは欠かせません。ただ、真空管のフィラメント(ヒーター)は意外と切れません。これまで1、2回交換しただけです。電解コンデンサーも意外と長持ちします。流石は日本製、電解コンデンサーだけは日本のものを使いましょう。

メンテナンスの開始

次はメンテナンスの記録です。

 

ボリュームやハムバランサーも取り換えれば良いかも知れませんが、オリジナルも残したいと言う気持ちもあります。ちなみにハムバランサーは固定抵抗で対応してます。
自作品等で固定バイアス電圧をボリュームのみで設定するものが多くありますが、ボリュームの劣化を考えると不安です。ボリュームの摺動端子がオープンになったときバイアスが深くなるよう設計しなければなりません。

これで終了です。以前は師匠からいただいた4μFの筒型オイルコンデンサーも付いていたのですが、何時だったか不細工なので撤去しました。

雑感

このアンプはNFBはなく(局部的NFBもない)、周波数特性もギリ20kHz、出力も3Wしか出ません。こんなもの使い物になるのか?みたいなスペックですが、世の中の数値では表せないものの代表みたいなもので、棺桶に入れてもらいたいものの一つになっております。

WE300Bについて

そういえば昔師匠に「WE300Bって言う素晴らしい真空管があるらしいじゃないですか。」って聞いたら、「300Bなんてものは散々真空管を弄り回した人が最後に行き着くところだ。あんた若いんだから、もっと色々やってみな。」って言われました。今になって分かるのですが、300Bなんて数ある真空管の中の一つです。まあ音は悪くありませんが、世の中に音の良い真空管は沢山あります。現在、300Bが初心者の球で5極管がプロの球みたいな取り扱いですね、ネットの悪影響でしょうか。
私もWE300Bは使ったことがありますが、(先輩からお借りして)落ち着きのある音色で、クラシック向きと言う印象でした。名古屋のツゲ電機に大量の在庫があり、将来、もしも金持ちになったら購入しようって思ってました。
しかし、数年後に300Bの大ブームが起こり在庫は一掃されました。その時買わなかったことについて、後悔はしてません。私には2A3が最高に合っていると思っているからです。ただ、安価だった2A3も高価になってしまったのが残念です。
ところで、ツゲ電機のオジサンも私の先生なんですが、300Bは高い電圧で使わないといい音しないって言ってました。規格以上の高電圧をかけても大丈夫だそうです。貧乏人のアンプは球を長持ちさせたいがために低い電圧で使うからクラシック向きの柔い音になるんだそうです。(ツゲ電機のオジサン元気かな、貧乏人の私にはそんな大胆なことできません。)