高音質レコード

現在、高音質な音楽と言ったら、何と言ってもハイレゾでしょうが、ローレゾなレコードの中にも高音質なものが沢山あります。何のことか意味不明ですが、そこは趣味の世界、どっぷりアナログ沼にはまった人達の中では、デジタルよりもアナログ(レコード)の方が音が良いとされています。
私は勿論そう思いませんが、その意見はよく分かります。アナログ時代の音楽はLP盤1枚制作するのに相当な時間とお金をかけていました。それをその時代の媒体で楽しむと言うことは、それなりに有意義なことではないかと思ってます。
そもそも我々世代の人間(1960年代前半生まれ)は、青春時代をFMとカセットテープで育ったので、レコード=高音質と言うものでした。今でこそカセットテープは(一部で)復権してるみたいですが、周波数レンジは狭い、雑音が付加される、歪みが多い、ワウフラッターはある等、どうしようもない音楽媒体だったのです。
それと比較し、レコードは物凄く高音質の媒体だった訳です。レコードに針を通すのが勿体なく、レコードを買ったらカセットテープに録音し、普段はそっちで聴いていた人も多いと思います。レコードを生で聴く(?)と言うことは、本当に贅沢で幸せなことでした。そのレコードですが、1970年代後半位から世の中がHiFiがブームとなり、更に高音質になって行きました。
 

↑ これはオーディオフェアの会場で販売されていた高音質盤です。こんなイベントもののレコードですが意外に音も演奏も良く、お金をかけて制作されたことが分かります。
 

ダイレクトカット盤

高音質レコードの種類として
①PCM録音盤(デジタル録音盤、ただしマスターテープがデジタルなだけで見た目は普通のレコード)
②45回転盤(LP盤は通常33+1/3回転ですが、敢えて45回転にして高音質を狙ったもの)
③ダイレクトカット盤(マスターにテープを使用せず、そのままラッカー盤に録音したもの)
④その他、DMM盤、重量盤、半速カット盤等色々な盤がありました。
 

↑ これは有名なシェフェールドラボのダイレクトカット盤です。日本でもダイレクトカット盤が沢山作られた時期があった様ですが、ダイレクトカット盤はダイレクトカットの効用のみで音が良くなる訳でなく、音の良いLP盤を作ろうと言う精神と、何よりマスタリングが大切なことがよく分かります。(音の良くないダイレクトカット盤も沢山あった。)その点、シェフェールドラボのリンカーンマヨルガさん、ダグサックスさんは素晴らしいです。

オリジナル盤

1980年代の終わり頃、ジャズオーディオファンの間でこんなことが起こってきます。
いつものオーディオ試聴会で1950年代後半のジャズ(マイルスだったか、コルトレーンだったか忘れましたが、1958年録音のLPと思います。)を聴いていると、
「お前のレコード、俺のより抜けてる。」
「俺のは外盤だから買った時からジャケが底抜けだったよ。」
「違う、違う、スネアの音がスカッと抜けてないか。」
「一寸、俺のをかけてみるね。」
「ほんとだ、こっちの方が音がいいな。」
改めて聴き比べると、国内盤の音がしょぼいことがハッキリします。最初はレコードプレーヤーが悪く音が劣化してしまったと思い心配しましたが、そんなことはありません。今まで国内盤は最高だと信じて疑いませんでしたが、これからは国内盤に見切りをつけるしかありません。
そんなことがあって当時は、輸入盤=高音質と盲目的に信じ、ジャズについては輸入盤(中古盤)を購入しました。現在の様にファーストプレス、セカンドプレス等の区別はなく、レーベルの違いのみに拘っていたと思います。(インターネットがない時代ですから、輸入盤の情報なんて輸入盤店でなければ教えてもらえません。)
バレンタインレコードマート(名古屋の中古屋)のお兄さんが言ってました。
「輸入盤って一口に言っても、1つのタイトルで、もの凄い種類の盤があるよ。契約変更で再発の発売元がすぐ変更されるし、アメリカは広いからそこらじゅうで作られてるからね。まああまり気にしない方が良いよ。」
今から考えれば凄く正しい意見です。当時でもクラシックファンにはドイツ盤やUK盤が良いのが当然のことだった様ですが、バレンタインレコードの兄さんから初めて聞いた時は途方にくれました。でも、情報がない分だけ、輸入盤が輝いているように見えました。

↑ これは日本の企画ものの高音質盤です。左は、宮下伸さんの30弦琴と高橋祐次郎さんの津軽三味線のコラボで、ビクターの太田一穂さんのプロデュースです。(この頃のビクターは面白いLPを沢山制作していた。)オーディオ的と言うか、長岡鉄男さんの好きそうな大げさな音がします。(水野ピースケさん譲ってくれてありがとう。)

現在(2023年)

今(令和5年現在)は、高音質=オリジナル盤となっている様です。密かなオリジナル盤ブームとも言うべき時代だと思います。Youtubeで検索しますとオリジナル盤最高!みたいな動画が沢山でてきます。
また、インターネットで検索すれば、どのレコードがオリジナル初回プレスなのか直ぐに分かる時代です。お金さえあれば簡単にそう言うものが手に入ります。
しかし、これは本当に正しいのでしょうか。
1950、60年代だったら日本と欧米に圧倒的な技術の差があったのかも知れませんが、1970年以降はそんな差があるとは思えません。(強いて言えば、1950年代のジャズであっても1980年代の国内再発盤の方が良い場合も多いのです。)
先日、イーグルスのホテルカリフォルニアの初回プレス盤がバナナレコードに売っていたので、試しにと買ってみたのですが、音は国内盤と変わりないばかりか、プチプチ雑音が多く(米盤の特徴ですね)総合的に見れば国内盤の方が優秀(高音質)だったのです。3,000円返せーと言いたくなります。(一寸前まで、これらのロックはオリジナルでも1,000円以下だったし。)500円の国内盤の方が絶対に良いです

今なら500円で買える(かもしれない)高音質レコード

と言う訳で、ブックオフの未整理500円コーナーで見掛た1980年代以降の優秀録音盤を紹介します。
中には輸入盤も同コーナーにあると思いますが、国内盤を購入することをお勧めします。
この時代のロックのレコードはドラムの音が電子ドラムっぽく処理されており、それがデジタル臭いと勘違いしてしまいます。時代の音だと思って聴きましょう。直ぐに慣れます。

バカにならない高音質国内盤等

続きまして、500円では無理だけど、まあまあ安く購入できる(かも知れない)高音質な国内盤等を紹介します。(ジャズ限定ですみません。)

過去に投げ売りされていたオリジナル盤

1970年代以降のロックのレコードは世界中でバカ売れしていた訳ですから、そんなものにそれほどの価値があるとは思えません。(田中伊佐資さん、これ以上クズレコの評価や値段を上げないでください。)
15、6年程前になるかと思いますが、サウンドベイの500円(もしかしたら300円)コーナーにキングクリムゾンの「暗黒の世界」のUK盤がありました。ちょっと珍しかったので購入してみました。家に帰って中を開けてみると(安レコを店で検盤するのを野暮だと思っていたので。)レーベルの縁がピンクで、変な無人島の絵が書き込まれてた安っぽいものでした。
「あちゃー、これ、廉価盤か海賊盤じゃん。サウンドベイの兄ちゃんのくそたーけ。」と思い、そのままお蔵入りしました。
当時、キングクリムゾンの国内盤は、アトランティックの赤緑レーベルだったので、アイランドのピンクリムレーベルがふざけたものに見えたのです。1回は掛けてみたのですが、やはりサーフェスノイズが大きく、
「やっぱ、日本の技術と品質が最高」と思いました。(雑誌(FMfanかFMレコパル)にもそう書いてあったし。)
後年、インターネットで何でも調べられるので、マトリクス情報から、それがオリジナル盤だと直ぐ分かりました。それが分かれば、「UK盤もまあまあの音じゃん。」となりましたが、今でも日本盤の音が悪いとは思いません。(ネットの情報をみると、国内盤はカスみたいに言われてますが、そんなことは絶対ありません。)

↑ ダメダメなオリジナル盤。(サウンドベイの500円コーナーでよく見掛たもの。)15,6年前、ロックの中古盤は、国内盤でも輸入再発盤でもオリジナル盤でも、十把一絡げで販売されてました。こう言う輸入盤を何枚か買うと必然的にオリジナル盤に当たります。当時、インターネットは無く、雑誌等の情報で国内盤の方が高級と思ってました。(今から考えれば良い時代でした。イーグルス盤は本文参照)

結論

結局、比較しなければ分からないようなオリジナル盤を高く買うのは止めましょう。と言いますか、オリジナル盤の定義を変えていただきたいと思います。
まず、1960年代以前のプレスであること、次に初回レーベルであること(初回プレスには拘らない)位にしたらどうでしょうか。
1970から80年代の安レコが益々高価になりますと、一般の安レコファン(ブックオフの未整理500円コーナーに結構居ます、私と同じ趣味の人)が路頭に迷ってしまいます。(現在、ロック国内盤は割と安いので安心はしてますが。)一聴して「音が良い」と言える1960年代以前のもののみ「オリジナル」としていただければ分かりやすくて良いです。
大の大人がじっくり試聴しなければ分からない様な1970年代以降のものは、大概、再発盤の方が音が良いのです。ハッキリ言えば、比べれば分かるが、比べなければ同じレコードです。
以下は国内盤や再発盤でオリジナル盤の音質を楽しむための方策です。
「初盤はラウドだな。」→国内盤のボリウムを上げましょう。
「初盤はシャキとしてるな。」→国内盤のトーンコントロールで高域を3デシベル上げましょう。
「初盤は低音がワーとくるな。」→国内盤のトーンコントロールで低域を3デシベル上げましょう。
「初期盤はイコライジングが違うぞ。」→国内盤はRIAAに統一され、この手の悩みは解消します。
「初期盤なのに音悪いな、でもこれが時代の音だな。」→国内(再発)盤大威張り。時代の音なんてクソくらえ。それと、国内盤にはパチパチ音や歪みが無くなっていますから、エフェクターを使ってこれを再現するのも良いと思います。
 

とは言うものの・・・

オリジナル盤って、何故か魅力があります。オリジナル盤には絶対的なものがあると言っても良いでしょう。
当然、再発盤の方が音が良い場合もあるのですが、それはオリジナルに対する冒涜とされ、違うレコードの様に扱われます。(例えばBG盤とかHTM盤とか。)
それでもオリジナル盤って心地いいと言いますか、何か実在感があります。不思議です。輸入盤の悪口を大分言いましたが、レコード裁判要件が発生し、国内盤と輸入盤の2枚所有しており、どちらかを残し買取屋に持って行かなければならない場合、凄く悩みます。定価で買った国内盤なのか、500円の外盤か、レコスケくんになった気分です。(世の中、白か黒じゃなく、グレーばかりです。)

↑ これはバナナレコードで買ったUK再発盤です。音のキラキラ感が違います。1970年代の再発盤(2EMI盤)ですがマスターテープの所有国は良いなって思います。ホワイトアルバムは盤質も良く、国内盤は聴かなくなりました。(オリジナル盤なんて高くて買えません。しかし、この頃こんな再発盤でもかなり高価になっています。)

2023年04月29日