真空管試験機

真空管の劣化具合を測定する試験機です。そんなもん作って何が楽しいのみたいな感じですが、これは市販されてないもの(あっても高価)なので作るしかありません。
製作のきっかけは、UY-807プシュプルモノラルアンプの頁で使用している6SH7のメタル管なんですが、今更ですが、オーディオ用途として非常に優秀なことが分かりました。
しかし、筐体がガラスではなく金属でできており中身が見えません。メタル管は信頼性は高そうな感じで良いのですが、中身が分からないので、新品か中古なのかも分かりません。(真空管販売店さんすみません)オークションとかでも外観で判断するしかありません。
こりゃダメだと思い真空管試験機を製作することにしました。
とは言え、そんな物の製作資料とかがそんなに多くある訳ではありません。そんな時、YouTubeを観ていると、またまた僕の大好きな宮甚商店のオヤジが頑張って製作してるではないですか。オヤジは、何十年も前の雑誌「初歩のラジオ」(1959年5月号「あなたの真空管を調べてみましょう」新宮 寛著)の記事を参考に製作した様です。それがとってもシンプルで、こんなもんだったら自分にも作れるじゃんと思ってしまったのです。
しかし、この真空管試験機、超シンプルな割にgm(の目安)が測定でき、簡易型とは言え実用に十分な性能です。

↑ 真空管試験機には取っ手を取り付けないとダメらしいです。(知らんけど)

設計方針

オリジナルの「初歩のラジオ」ではトランスレス方式で信号源も商用電圧を使用したとっても合理的なものなのですが、折角作るんだったら色々機能を増やそうと思いました。(大体の場合オリジナルが一番使いやすいのですけどね)
機能の追加としては、パワー管のペアの判定でgmが揃っている以外に、Ipが揃っているかも目安として測定できるようにしました。
オリジナルとの変更点は次のとおりです。
① トランスレス方式は踏襲するが、メインの電源はACアダプターとし、昇圧DC/DCでB、C電圧、降圧DC/DCでA電圧(ヒーター)を作る。。
② 信号源は商用電圧でなく1kHz発振ユニット基板とする。
③ 信号用メーターはVUメーターユニット基板を使用する。
④ プレート電流をアナログ電流計で測定できる様にする。
と段々シンプルさが消えてゆきます。こんなものを真面に製作していたら凄く大掛かりなものになってしまいます。ここではアマゾンで販売されている激安価格のユニット基板を使用することにしました。

仕様

① 主電源(ACアダプター)19V3.15A(60W)
② A電圧(ヒーター)1~18V可変(20W)
③ B電圧100~200V可変(40W)←後に150V固定でも良かったと後悔
④ C電圧-1~-50V可変
⑤ gm測定はグリッド及びプレートにそれぞれ0dBmフルスケールの電圧計を設置(市販のアナログVU計基板のLRを使用)←後にグリッド側は不要であったと後悔
⑥ プレート電流測定は最大100mA(アナログメータ使用)
⑦ カソードバイアス抵抗220Ω(オリジナルとほぼ同じ)←これのおかげで大概の球は測定できる

回路図

↑ ユニット基板が販売されているものはそれを採用しました。楽ちんです。

↑ 真空管は基本ボトムビューとなっておりIC等のトップビューと異なるため感覚がずれます。

オリジナルの「初歩のラジオ」(1959年5月号「あなたの真空管を調べてみましょう」新宮 寛著)の記事と比較し結構複雑になってしまいました。真空管ソケットは後で増設するのが大変なので、できるだけ多く設置しました。世の中、変換ソケットもありますし、これだけあれば何とかなるくらいの感じで設置してあります。
各ユニット基板は回路図が公表されてないものがほとんどで手探りで配線しています。

各ユニット基板

(1)DCDCコンバータ

A電圧用のDC/DCは降圧用のもので20Wだそうです。パワー管のヒーターでも通常の球ならば10W以下なので大丈夫とは思いますが、何分廉価ユニットなので心配です。主電源が19Vなので1~18Vで使用できます。
B電源及びC電源用のDC/DCは昇圧用のもので詳しい規格が書かれてませんでした。アマゾンのAIさんに聞いたところ、入力19V、出力±200Vで0.1Aは供給できるそうです。うーん、大丈夫とは思いますが、何分廉価ユニットなので心配です。マイナス側も出力がありますが、電圧制御はプラス側で行っているみたいで、マイナス側のみに負荷する場合はプラス側にダミー負荷する必要がある様です。(B電圧用のDC/DCは安全のためマイナス側の電解コンデンサーを撤去しました。←プラス側のみ負荷が重くなると無負荷のマイナス側の出力電圧が規定以上に上がってしまう)
これらもアマゾンで1000円程度です。

(2)デジタルパネルメーター

A電圧(ヒーター電圧)の設定電圧及び電流を測定するためにデジタルパネルメーターユニットを使用しました。これはaitendoで500円と格安な割に測定電圧0~100V、測定電流0~10Aと優れものです。説明書はなく電圧測定端子と電流測定端子と電源供給端子が出ています。電圧測定端子は基本並列に接続すれば電圧測定できると分かりますが、電流測定は直列なのでどうすれば良いのでしょうか。
結果的には被測定機器のマイナス側を電流測定端子に接続し、デジタルパネルメーターのグランド端子を共通にして測定するようです。(電源供給端子のマイナス側が電流測定端子のマイナス側と接続されている。最初、被測定負荷のプラス側で電流測定しようとしたためショートした)

(3)VUメーターユニット

オリジナルの「初歩のラジオ」(1959年5月号「あなたの真空管を調べてみましょう」新宮 寛著)では出力トランスの2次側をブリッジ整流して電流計を駆動する方式ですが、今どき出力トランスは高価ですし、プレート電流を測定したいと言う目論みもありましたので、(100mA流せるOPTは結構大型で高価になる)ここではチョーク負荷とし、プレートに接続した交流電圧計で出力電圧を測定することにしました。
交流電圧計はVUメーターユニットを使用しました。ユニットによってはログアンプIC搭載のものもありましたが、リニアの方が一般的で、利得の違いが良く分かると思います。ここではメーターの振れが1/10のところが-20dBのリニア目盛のVUメーターユニットを使用しました。
ただ、このユニットに接続できるアナログメーターの規格が分からなかったので、とりあえず各チャンネルとも100μAの電流計を接続しユニット内のトリマーで0dBmを入力した時にフルスケールとなるようにしました。
また、入力抵抗の設定値が低かったので、ここは10kΩとしました。(写真右上の様に改修)
なお、このユニット、アマゾンで購入したのですが、シルク印刷のInputのL、Rが逆で、R側に入力するとVUメーター1に出力されます。通常はL側がメーターの1だと思うのですが中国では逆なのでしょうか。
この基板は他の基板と比較し一寸高価で、アマゾンで2000円くらいだったと思います。

(4)発振器(OSC)ユニット

オリジナルの「初歩のラジオ」ではヒータートランスの交流電圧を分圧し、信号電圧を得る合理的なものですが、ヒーター電流による電圧降下や電源ノイズの影響が避けられないと考え、1kHzの信号発生ユニットを使用することにしました。
これもアマゾンで販売している中華製ユニットです。説明書どおりに製作すると規定の周波数が出力されないので、使用されているIC(XR-2206)のデータシートをダウンロードし適切なコンデンサーに交換します。
ところでこのIC、安価な割に出力周波数が0.02Hz~1MHz、出力波形が方形波、正弦波、三角波、最大出力電圧が6Vpp、出力抵抗が600Ωと優秀です。
基本的には出力周波数1kHz、出力波形正弦波、出力電圧0dBmで使用します。出力端子には直流が重畳されますので、出力端子にはコンデンサーが必要です。
これも購入先はアマゾンで、アクリルの簡易ケース付きで1000円くらいです。

(5)リプルフィルター

(1)の昇圧DCDCコンバーターですが、ユーチューバーの宮甚商店さんによると「ギャー」みたいな可聴帯域でのノイズを発生することがあるらしく、(入力電圧及び出力電圧によって発生する場合があると言うことらしい)また、他の先人の作例をみてもリプルフィルターは必須の様です。
ここでは安全策を取りパワーMOSFETのリプルフィルターを製作しました。現在、高耐圧デバイスとしてはトランジスタよりもMOSFETの方が一般的な様です。電圧ロスは5%に設定しました。
基板の奥に設置している端子群は、メイン電源(19V)の分配端子です。

製作過程

 

左は底板を外したところです。(操作パネル面が下側)中身はかなりごちゃごちゃしてます。右は操作パネル側のソケット群で30mmのスペーサーを介しシールドを兼ねたアルミ板の蓋を被せます。そのアルミ板の上にリプルフィルターを設置しました。

使用実感

使ってみますと結構面白いです。真空管を挿し電源を投入しヒーター電圧を設定し、シグナルのボリュームを上げシグナルメーターが100μAになる時のシグナルボリュームの目盛で良否を判断します。(原則、プレート電圧は150V、グリッド電圧は-1Vとします)
カソードバイアス抵抗を220Ωに設定しているためか3極菅、5極管に限らず18/100~70/100の範囲で測定できました。5極管ではメーターが振り切れると思い、入力に20dBの減衰スイッチを設けたのですが不要でした。
ところでこの真空管試験機ですが、gmの絶対値は測定できません。新品状態からどれだけ劣化しているか相対値で判断します。凄く合理的です。(新品がない場合は多数決で判断している)
なお、パワー管、特に2A3などの直熱菅を測定する場合、220Ωのバイアス抵抗が効きませんので、適度にバイアスを深くする必要があります。RCAの2A3で試験してみましたら-25Vのバイアスで20mAのプレート電流になりました。この方法でgm以外にプレート電圧150V時のIpが測定でき、マッチドペアの測定もできます。
肝心の真空管の良否ですが、ダメなやつは直ぐ分かります。もしかしたら使えるかもと思って取って置いたやつはゴミ箱行きになります。使い込んだ真空管は微妙です。シグナルボリューム位置で70%を不良とするとダメなものもありますが、測らなければ実用に影響ないものも多々あります。世の中には知らない方が良かったと思えることが多々あります。

↑ パワー管を測定する場合はバイアスを深くします。最小点(-1V)ではプレート電流計が振り切れます。写真では-25Vに設定し約20mAでした。増幅度は低く、シグナルボリューム位置は65/100です。(デジタルパネルメーターは写真で撮るとセグメントが欠けます。)
したがって、オリジナルの「初歩のラジオ」のままパワー管を測定するのは危険かもしれません。(知らんけど)

2A3の寿命

真空管試験機が完成した時に楽しくて色々な真空管を測定するのですが、稀におかしなことが起こります。
今、現役バリバリの2A3(2A3シングルステレオアンプに使用)なんですが、測定すると3極管でなく整流管になっていたのです。試験機が壊れたのかと思い他の2A3を測定すると正常です。
しょうがないので、元のアンプに差し戻し電源スイッチを入れると右スピーカーからバリバリと大音響で雑音が出ます。
これはいかん。と言うことで、普通は電源スイッチを切りますが、僕は2A3をコンコンと叩きました。そうすると正常に戻るのです。
直熱菅では往々にしてあるのですが、フィラメントとグリッドが接触してしまうのです。動作中にこれが起こるとスピーカーからバリバリと雑音が出ます。(注意:OPTやスピーカーには大きな負担になります)
今回は測定するために2A3をアンプから引っこ抜き、暫く横に寝かせていたのが良くなかったようです。昔、師匠から「直熱菅は縦にして運ばないとダメだよ」って言われたことを思い出します。家の2A3は長年の使用(20年位経過していると思う)によりフィラメントが延びてしまったのだと思います。普通に使っていれば何も知らず後5年位は使えたと思いますが、こんな不良を知ってしまったら交換するしかありません。
これも測定しようと思ったから発見したものであって、いじってみなければ分かりません。ホント、測定って大切と言いますか、大きなお世話と言いますか、悩みます。